保健師国試の保健行動理論|ヘルスビリーフモデル・行動変容ステージ・プリシード・プロシードを事例で判断
保健師国家試験の保健行動・健康教育の理論を整理。ヘルスビリーフモデルの4要素、行動変容ステージごとの働きかけ、自己効力感の4つの情報源、プリシード・プロシードの準備・強化・実現要因を、事例の発言から判断する表と、住民組織・地域づくりの理論とあわせて解説します。
このページでわかること
- 保健指導・健康教育で使う理論(ヘルスビリーフモデル・行動変容ステージ・プリシード・プロシード・自己効力感)の要点
- 事例の発言から、どの理論の、どの要素かを判断する方法
- 住民組織・地域づくりの理論(エンパワメント・ソーシャルキャピタル・コミュニティ・アズ・パートナー)
理論問題は「発言を読んで、当てはめる」
保健行動や、健康教育の理論は、定義を覚えるだけでなく、事例の発言が、どの要素にあたるかを、判断させる形で出題されます。それぞれの理論の「要素の名前」と、「その要素になる発言の例」を、セットで覚えると、得点しやすくなります。
ヘルスビリーフモデル(健康信念モデル)
ヘルスビリーフモデルは、人が健康行動をとるかを、病気の脅威の認識と、行動の利益・障害の認識で説明します。
| 要素 | 意味 | 発言の例 |
|---|---|---|
| 認知された罹患性(脆弱性) | 自分が、その病気にかかりそうだと思うか | 「自分は大丈夫」「父親も健康だから」→低い |
| 認知された重大性 | かかったときの影響が、重大だと思うか | 「糖尿病は薬を飲めば問題ない」→低い |
| 認知された利益 | 行動をとると、効果があると思うか | 「禁煙すると、体調が良くなる」→高い |
| 認知された障害 | 行動を妨げる要因が、大きいと思うか | 「やめられると思えない」「時間がない」→高い |
「自覚症状がないから大丈夫」は、罹患性と重大性の認識が低い状態で、保健師は、放置した場合の身体への影響(合併症など)を伝え、重大性の認識を高めます。「タバコはやめられると思えない」は、障害の認識が高い状態で、障害を下げる働きかけ(禁煙外来・補助薬の紹介)が、必要です。
行動変容ステージモデル(トランスセオレティカルモデル)
行動変容ステージモデルは、行動の変化を、5つのステージで捉えます。
| ステージ | 状態 | 有効な働きかけ |
|---|---|---|
| 無関心期 | 6か月以内に、変える気がない | 健康リスクの情報提供・意識の高揚 |
| 関心期 | 6か月以内に、変えようと考えている | メリット・デメリットの整理 |
| 準備期 | 1か月以内に、始めようとしている | 具体的な知識・方法・計画づくり |
| 実行期 | 行動を始めて、6か月未満 | 刺激のコントロール・強化マネジメント(ご褒美) |
| 維持期 | 行動を始めて、6か月以上 | 再発の予防・習慣化の支援 |
例えば、「禁煙しようと思う。良い方法はありますか」と、尋ねる人は、準備期で、禁煙の具体的な知識や方法を、提供するのが適しています。「間食をやめ、ごはんの量を減らしているが、続けるのが大変」という人は、実行期です。「禁煙が必要」という発言が全くない人には、無関心期として、禁煙の重要性を説明します。禁煙外来の紹介や、スケジュールの作成は、準備期・実行期の働きかけで、無関心期には、負担になります。
変化のプロセスにも、名前があります。意識の高揚(情報を得て理解を深める)、環境の再評価(自分の行動が周囲に与える影響に気づく)、刺激のコントロール(きっかけを避ける)、強化マネジメント(報酬を与える)、援助関係の利用(周囲の支援を活用する)などです。「継続できたら1か月ごとに自分にご褒美」は、強化マネジメントです。
自己効力感(セルフエフィカシー)
自己効力感は、「自分にはできる」という自信で、バンデューラが提唱しました。高める情報源は、4つです。
- 遂行行動の達成(成功体験):最も強い
- 代理的経験(他の人の成功を見る)
- 言語的説得(「あなたならできる」と励ます)
- 生理的・情動的喚起(体調や、気持ちが整う)
保健指導では、できていることを具体的に認め、小さな目標を立てて、成功体験を積んでもらいます。失敗の理由を掘り下げる質問や、病気の怖さを説明することは、自己効力感を下げることがあります。「10年間、毎日1人で歩いてきたAさん」には、新しい教室を勧めるより、まず、その継続を承認・称賛します。「ご褒美を考える」などは、変化のプロセスで、自己効力感の情報源とは別です。
プリシード・プロシードモデル
プリシード・プロシードモデルは、健康教育・ヘルスプロモーションの、計画と評価の枠組みで、8段階で構成されます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1段階 | 社会アセスメント(QOL) |
| 第2段階 | 疫学アセスメント(健康問題の頻度・分布) |
| 第3段階 | 教育/エコロジカル・アセスメント(行動に影響する要因) |
| 第4段階 | 運営・政策アセスメント |
| 第5〜8段階 | 実施・過程評価・影響評価・結果評価(プロシード) |
第3段階の、行動に影響する要因は、次の3つです。
| 要因 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 準備要因 | 行動の動機づけ(知識・態度・信念・価値観・自己効力感) | 離乳食の情報を求めている |
| 強化要因 | 周囲からの支持・フィードバック | 妻の「一緒に痩せよう」、夫婦の「ありがとう」、仲間の応援 |
| 実現要因 | 行動を実現する資源・技術・サービス | 禁煙外来がある、育児休業を取得できる、かかりつけ医がいる |
「本人の内面(知識・気持ち)」は準備要因、「周囲の反応・支え」は強化要因、「行動できる環境・制度・資源」は実現要因です。
事業評価の枠組み
ストラクチャー・プロセス・アウトカム評価は、体制・実施の過程・成果で、事業を評価します。「参加者の満足度」はプロセス、「血圧値・有所見率」はアウトカム、「参加者数」はアウトプット、「連携会議の開催」はストラクチャー・プロセスです。PDCAサイクルで、評価を、次の計画に反映します。
住民・地域に働きかける理論
- エンパワメント:住民が自分たちの課題を、主体的に解決する力を高める。保健師は、決めずに、引き出す
- ソーシャルキャピタル:信頼・規範・ネットワーク。つながりが豊かな地域ほど、健康水準が高い傾向(パットナム)
- コミュニティ・アズ・パートナー・モデル:コア(人口・歴史・価値観)と、8つのサブシステム。地区別の人口は、コア
- グループの発達段階:形成期(安心感づくり)→混乱期→規範期→遂行期。開始期は、一人ひとりを個別にとらえる
- ヘルスリテラシー:機能的・相互作用的・批判的の3レベル
- ナッジ:選択の自由を残して、環境の設計で、自然に行動を促す(階段に消費カロリーを表示する)
- ヘルスプロモーション(オタワ憲章):健康的な公共政策づくり、健康を支援する環境づくり、地域活動の強化、個人技術の向上、ヘルスサービスの方向転換
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よくある質問
行動変容ステージの無関心期には、どんな働きかけが適切ですか?
健康リスクについての情報提供や、意識を高める働きかけが適切です。禁煙外来の紹介や、禁煙のスケジュール作成は、準備期・実行期の働きかけで、無関心期の人には負担になり、効果がありません。
プリシード・プロシードモデルの、準備要因・強化要因・実現要因の違いは?
準備要因は、行動の動機づけとなる本人の知識・態度・信念・自己効力感、強化要因は、家族・友人・仲間などの周囲からの支持や反応、実現要因は、行動を実現するための資源・技術・サービス・制度です。