保健師国試の虐待・DV対策|児童・高齢者・障害者・配偶者の法律を比較表で整理
保健師国家試験の児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法・DV防止法を、対象・通報先・通報義務・立入調査・保護の措置で比較。守秘義務より通報が優先される原則、本人の同意がなくても安全を優先する場面、事例問題の対応を、表で整理します。
このページでわかること
- 児童・高齢者・障害者・配偶者への虐待・暴力に関する4つの法律の、比較
- 通報(通告)の義務、通報先、立入調査、保護の仕組みの違い
- 守秘義務と通報の関係、事例問題での優先順位
虐待・暴力の法律は「表」で比較する
児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法・DV防止法は、いずれも、保健師国家試験で出題されます。似た点が多く、通報先や、義務の程度を取り違えやすいため、比較表で整理します。
| 項目 | 児童虐待防止法 | 高齢者虐待防止法 | 障害者虐待防止法 | DV防止法 |
|---|---|---|---|---|
| 対象 | 18歳未満の児童 | 65歳以上の高齢者 | 障害のある人 | 配偶者など(事実婚・元配偶者を含む) |
| 通報(通告)先 | 児童相談所・市町村・福祉事務所 | 市町村(地域包括支援センター) | 市町村の障害者虐待防止センター | 配偶者暴力相談支援センター・警察 |
| 発見者の義務 | 通告の義務(疑いの段階でよい) | 生命・身体に重大な危険がある場合は通報の義務、それ以外は努力義務 | 通報の義務 | 通報は努力義務(医療関係者は、本人の意思を尊重) |
| 立入調査 | 児童相談所が実施 | 市町村長が実施 | 市町村長が実施 | — |
| 保護の措置 | 一時保護・施設入所 | やむを得ない事由による措置 | やむを得ない事由による措置 | 保護命令(裁判所)・一時保護 |
共通する原則
守秘義務より、通報・通告が優先される
児童虐待や、高齢者虐待を疑ったとき、守秘義務を理由に、通報をためらってはいけません。法律上、通報・通告は、守秘義務違反にあたらないとされています。通報者の情報は、虐待をした人(養護者・保護者)に、漏らしてはいけません。
本人の同意がなくても、安全を優先する
高齢者虐待で、身体的な暴力など、緊急性が高い場合は、本人の同意が得られなくても、市町村への通報と、情報の共有を行います。同意が得られるまで説得を続けて、通報を遅らせることは、不適切です。
加害者を責めず、背景を理解する
養護者による虐待の背景には、介護の負担・失業・孤立・疾患などがあることが多く、養護者への支援(負担の軽減・就労支援)も、対応の一部です。「虐待です」と責める対応や、一方的に分離を勧める対応は、関係を悪化させます。ただし、高齢者・子どもの安全が脅かされているときは、迅速な保護が、優先されます。
児童虐待への対応
- 種類:身体的虐待・性的虐待・ネグレクト・心理的虐待。令和2年度の児童相談所の相談件数は、心理的虐待が最も多く(約59%)、面前でのDV(子どもの目の前での配偶者への暴力)も含まれます
- 市町村の役割:相談・通告の受理、要保護児童対策地域協議会での情報共有と役割分担、見守り、乳幼児健診の未受診者への対応、こども家庭センター
- 都道府県(児童相談所)の役割:一時保護、施設入所措置、専門的な調査・判定、親子の再統合に向けた支援
- 緊急時:子どもの顔が腫れるほどの暴力があり、保護者も「再び暴力を振るいそう」と訴えている場合は、児童相談所による一時保護を検討する
- 学校での対応:本人の同意を得て、けがを記録し、管理職に報告し、児童相談所に通告する。通告後に、保護者が威圧的に情報を求めても、学校だけで対応せず、児童相談所と共有する
高齢者虐待への対応
- 種類:身体的虐待・介護や世話の放棄(ネグレクト)・心理的虐待・性的虐待・経済的虐待
- 養護者による虐待と、養介護施設従事者等による虐待があり、どちらも、市町村への通報が基本
- 市町村は、事実の確認・安全の確認、立入調査、やむを得ない事由による措置(老人福祉法)、成年後見制度の市町村長申立てを行う
- セルフネグレクト(自分で、衣食住の世話ができなくなる状態)は、高齢者虐待防止法の「虐待」の定義には、含まれませんが、地域包括支援センターを中心に、支援します。尿臭がする高齢者への、家庭訪問では、まず身体状況を確認します
DV(配偶者からの暴力)への対応
- 被害者が、女性とは限らず、身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力や、経済的な暴力、性的な暴力も、含まれます
- 疑われる場面で、被害者の意思や、安全を考えずに、警察へ通報する・第三者に聞き取る・自宅に調査票を郵送するといった対応は、被害者を危険にさらします。健診などの場を活用して、1対1で話せる環境をつくります
- 相談・保護の窓口は、配偶者暴力相談支援センター(女性相談支援センターなどが担う)、警察。裁判所の保護命令で、接近禁止などを求められます
- 子どものいる家庭のDVは、面前DV=心理的虐待でもあり、児童虐待の視点でも、対応します
事例問題の考え方
| 場面 | 適切な対応 |
|---|---|
| 虐待の疑いで、通告があったが、子どもの安全が確認できていない | 児童相談所の職員と、家庭訪問して、直接、安全を確認する |
| 高齢者への暴力が確認され、本人が同意しない | 同意の有無にかかわらず、市町村へ通報・情報共有する |
| 民生委員から虐待の連絡があった | 通報者の情報を、養護者に伝えず、まず、養護者の負担や、困りごとを確認する |
| 保護者が「叩いてしまいそう」と電話してきた | 保護者を責めず、緊急性を判断し、一時保護も含めて検討する |
| DVが疑われる母親が、乳幼児健診に来所した | 児の発達の相談という名目で、個別の相談の場を設ける |
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よくある質問
虐待を疑ったとき、守秘義務を理由に通報をためらってよいですか?
ためらってはいけません。児童虐待や高齢者虐待では、通報・通告は、守秘義務違反にあたらないとされ、通報者の情報は、虐待をした人に伝えないことも、定められています。
高齢者虐待で、本人が情報共有に同意しない場合は、どうしますか?
身体的な暴力など、生命・身体に重大な危険がある場合は、本人の同意の有無にかかわらず、市町村へ通報し、情報を共有します。同意が得られるまで説得を続けて、通報を遅らせることは、不適切です。