保健師国試の計算問題の解き方|合計特殊出生率・年齢調整死亡率・オッズ比
保健師国家試験で頻出の計算問題を、合計特殊出生率・年齢調整死亡率(直接法)・罹患率・相対危険・オッズ比・感度特異度に分けて、分子と分母の考え方から解説。第107〜111回の過去問と対応づけて整理します。
このページでわかること
- 保健師国試で頻出の計算問題(合計特殊出生率・年齢調整死亡率/標準化死亡比・罹患率/有病率・相対危険/オッズ比/寄与危険・感度特異度・相対頻度/致命率・四分位数)の解き方
- 公式を丸暗記するのではなく「分子・分母が何か」で解くための考え方
- 実際の過去問での出題パターンと計算の流れ
計算問題は「公式の丸暗記」より「分子・分母」で解ける
保健師国試の計算問題は、毎回似たような指標が形を変えて出題されます。公式をそのまま暗記しようとすると、数値の対応関係を取り違えて計算ミスにつながりやすいのが実情です。
どの指標も「何を分子に置き、何を分母に置くか」を理解していれば、数値が変わっても対応できます。ここでは頻出の指標を、実際の過去問と対応づけて整理します。
※以下の定義・計算式は、各設問のexplanation(解説)と用語集の記載、および厚生労働省の人口動態統計の定義と照合しています。
1. 合計特殊出生率(TFR)
合計特殊出生率は、母の年齢別出生数をその年齢の女性人口で除して年齢別出生率を求め、これを15歳から49歳までの再生産年齢について合計したものです。
- 分子:母の年齢別出生数
- 分母:同年齢の女性人口
- これを15〜49歳で合計する
単純に「出生数 ÷ 総人口 × 1,000」で求まるのは普通出生率であり、合計特殊出生率とは別の指標です。また、女児の出生数だけで同様の計算をしたものは総再生産率と呼ばれ、合計特殊出生率とは区別されます。
過去問での問われ方
第110回午前問19では「合計特殊出生率の算出方法で正しいのはどれか」という形で、普通出生率・総再生産率の算出方法と区別させる出題がありました。
普通出生率そのものを計算させる問題も出題されています。第108回午後問36では、A市のB地区(人口6,000人、出生数80人)の出生率を求める計算問題が出題されました。80÷6,000×1,000=13.3…となり、小数点以下第1位を四捨五入すると13(人口千対)が正解です。
2. 年齢調整死亡率(直接法)
年齢構成が異なる集団同士で死亡率を比較する場合、そのまま粗死亡率を比べると年齢構成の違いが結果を歪めてしまいます。そこで用いられるのが年齢調整死亡率です。
直接法による年齢調整死亡率の算出には、次の2つの情報が必要です。
- 観察集団の年齢階級別死亡率
- 基準集団の年齢階級別人口
この2つを年齢階級ごとに掛け合わせて期待死亡数を求め、基準集団の総人口で割ることで年齢調整死亡率が求まります。「観察集団の死亡率」に「基準集団の人口構成」を当てはめる、という組み合わせを取り違えないことがポイントです。
※標準化死亡比(SMR)は、実際の死亡数と直接法で求めた期待死亡数を比較する別の指標です。あわせて出題されることがあるため、両者の違いは区別しておきましょう。
過去問での問われ方
第111回午後問33では「直接法による年齢調整死亡率を算出する際に必要な情報はどれか。2つ選べ」という形で、5つの選択肢から必要な2つを選ばせる出題がありました。正解は「基準集団の年齢階級別人口」と「観察集団の年齢階級別死亡率」です。
標準化死亡比(SMR、間接法)
標準化死亡比(SMR)は、基準集団の年齢階級別死亡率に観察集団(A市など)の年齢階級別人口を当てはめて期待死亡数を年齢階級ごとに算出し、その合計に対する実際の死亡数の合計の比を求める指標です(基準を100とする)。直接法とは「死亡率」と「人口」のどちらを基準集団側・観察集団側から取るかが逆になる点に注意しましょう。
SMR = 実際の死亡数の合計 ÷ 期待死亡数の合計 × 100
第112回午後問44では、県を基準集団としたA市のSMRを求める計算問題が出題されました。年齢階級ごとに「県の死亡率×A市の人口」で期待死亡数を求めると、40歳未満3、40〜64歳6、65歳以上16で合計25。A市の実際の死亡数の合計は2+6+24=32。SMR=32÷25×100=128が正解です。
3. 罹患率・有病率(累積罹患率)
罹患率は「一定期間に新たに発生した患者の頻度」、有病率は「ある一時点で疾病を有している人の割合」を示す指標です。慢性疾患のように罹患期間が長い疾病は、罹患率が同じでも有病率が高くなりやすいという関係にあります。
罹患率のうち、累積罹患率は次の式で求めます。
- 分子:観察期間中に新たに発生した患者数
- 分母:観察開始時点の対象集団の人数
観察開始時点ですでに疾病を有している人(既存患者)や、対象者ごとの観察期間の総和(人年)は、累積罹患率の計算には使いません。人年を分母に用いるのは、対象者ごとの追跡期間が異なる場合に用いる罹患率(人年法)であり、累積罹患率とは別の考え方です。
過去問での問われ方
第109回午前問37では「累積罹患率の計算に必要なのはどれか。2つ選べ」という形で出題され、既存患者数・観察終了時点の人数・人年(観察期間の総和)は誤りの選択肢として並べられていました。
有病率(有病割合)も同じ「分子÷分母」の考え方で求められます。第110回午前問49では、2,500人を層化抽出して2,000人が調査に参加し、そのうち抗体保有者が1,800人であったときの抗体保有率が問われました。分母は抽出した2,500人ではなく、実際に調査に参加した2,000人である点がポイントで、1,800÷2,000×100=**90%**が正解です。
4. 相対危険・オッズ比・寄与危険
要因と疾病の関連の強さを示す指標として、相対危険・オッズ比・寄与危険の3つが頻出です。それぞれ分子・分母の置き方が異なるため、混同しないよう整理しましょう。
相対危険(リスク比・罹患率比)
曝露群の罹患率 ÷ 非曝露群の罹患率で求める比です。主にコホート研究で算出され、疫学における因果関係の判定基準(Hillの基準)のうち「関連の強固性」の評価に用いられます。
第111回午後問26では「次の指標で相対危険はどれか」という形で出題され、死亡率・寄与危険・相対頻度・有病率と並ぶ選択肢の中から「罹患率比」を選ばせる問題でした。
オッズ比
症例対照研究で用いられる指標で、次の式で求めます。
オッズ比 = (症例群の曝露あり数 × 対照群の曝露なし数) ÷ (症例群の曝露なし数 × 対照群の曝露あり数)
まれな疾病では、オッズ比は相対危険度の近似値として解釈できます。
第107回午後問53では、大腸癌患者100人と大腸癌のない人間ドック受検者100人の肥満既往を比較する2×2表が示され、「肥満の既往ありの既往なしに対する大腸癌ありのオッズ比を求めよ」という計算問題が出題されました。(25×80)÷(75×20)=1.33…となり、小数点以下第2位を四捨五入すると1.3が正解です。
同様の形式は第109回午後問53でも出題されています。慢性腎臓病の有無と高血圧の有無を1,000人で調査した2×2表(高血圧あり:CKDあり100人・CKDなし200人/高血圧なし:CKDあり100人・CKDなし600人)から、高血圧「あり」の「なし」に対するCKD「あり」のオッズ比を求める問題で、(100×600)÷(200×100)=3.0が正解です。
寄与危険・寄与危険割合
寄与危険は「曝露群の罹患率 − 非曝露群の罹患率」で求める、絶対的な差を表す指標です。相対危険が「何倍か」を示すのに対し、寄与危険は「どれだけ罹患が上乗せされたか」を示します。
第111回午前問29では、コホート研究で得られた曝露群・非曝露群それぞれの1,000人年当たりの罹患率から寄与危険を求める計算問題が出題されました。
寄与危険割合は、曝露群の罹患のうちその曝露要因が原因で説明できる割合を示す指標で、次の式で求めます。
寄与危険割合(%) = (曝露群の罹患率 − 非曝露群の罹患率) ÷ 曝露群の罹患率 × 100
第109回午前問40では、虚血性心疾患死亡率が喫煙群50.0・非喫煙群25.0(10万人年対)という数値から寄与危険割合を求める問題が出題されました。(50.0−25.0)÷50.0×100=**50%**となり、喫煙群の死亡のうち50%は喫煙が原因で説明できると解釈します。
5. 感度・特異度・陽性反応的中度
スクリーニング検査の性能を評価する指標として、感度・特異度・陽性反応的中度(PPV)が頻出です。
- 感度(敏感度):疾病がある人を正しく陽性と判定する割合
- 特異度:疾病がない人を正しく陰性と判定する割合
- 陽性反応的中度:検査で陽性と判定された人のうち、実際に疾病がある人の割合
感度・特異度は検査そのものの性能を示す指標で、対象集団の有病率が変わっても値は変わりません。一方、陽性反応的中度は有病率が高い集団ほど高くなるという性質があり、この違いは頻出のひっかけポイントです。
陽性反応的中度は次の式で求めます。
陽性反応的中度(%) = 真陽性 ÷ (真陽性 + 偽陽性) × 100
過去問での問われ方
第111回午後問52では、大腸がん検診の受診者5,001人のうち精密検査が必要と判定された500人・実際に大腸癌と診断された10人という数値から、陽性反応的中度を求める計算問題が出題されました。真陽性10人、偽陽性は500−10=490人なので、10÷500×100=**2.0%**が正解です。
6. 相対頻度・致命率(致死率)・死亡率の関係
相対頻度は「死亡数のうち、ある死因が占める割合」を示す指標です。全死亡数を分母に取る点が、罹患率や有病率(対象集団を分母に取る)と異なります。
相対頻度(%) = ある死因による死亡数 ÷ 全死亡数 × 100
第107回午前問40では、A市の全死亡数1,000人・悪性新生物による死亡数200人という数値から、死亡に占める悪性新生物の相対頻度を求める問題が出題されました。設問には罹患数300人という情報も示されていますが、相対頻度の計算には使いません。200÷1,000×100=**20%**が正解です。
**致命率(致死率)**は「ある疾病に罹患した人のうち、その疾病で死亡した人の割合」です。分母が「集団全体」ではなく「その疾病の罹患者数」である点が相対頻度・死亡率との違いです。
致命率(%) = ある疾病による死亡数 ÷ その疾病の罹患者数 × 100
第108回午前問40では、肺炎患者1,000人のうち感染症Bによる罹患者が100人・そのうち死亡数15人という数値から、感染症Bの致命率を求める問題が出題されました。15÷100×100=**15%**が正解です。
罹患率・致命率・死亡率の3つは、死亡率 = 罹患率 × 致命率という関係で結びついています。第111回午前問40では、疾患Aの1年間の罹患率(人口10万対400)と致命率(50%)から人口10万対の死亡率を求める問題が出題されました。400×0.5=200が正解です。
7. 代表値・四分位数
計算問題では、比率だけでなく記述統計の基本量(代表値・四分位数)が問われることもあります。四分位数は、データを値の大きさ順に並べて4等分したときの境界の値で、小さい方から第1四分位数(25%点)・第2四分位数(中央値、50%点)・第3四分位数(75%点)と呼びます。
第110回午前問40では、12人分の体重データ(46.0〜65.5kgの昇順12値)から第3四分位数を求める問題が出題されました。算出方法(区分方法)によって多少の違いはありますが、本問のデータでは57.5kgが正解です。
まとめ:指標・分子・分母の対応表
| 指標 | 分子 | 分母 |
|---|---|---|
| 合計特殊出生率 | 母の年齢別出生数(15〜49歳で合計) | 同年齢の女性人口 |
| 普通出生率 | 出生数 | 総人口 |
| 年齢調整死亡率(直接法) | 観察集団の年齢階級別死亡率 × 基準集団の年齢階級別人口(期待死亡数) | 基準集団の総人口 |
| 標準化死亡比(SMR、間接法) | 実際の死亡数の合計 | 期待死亡数の合計(基準集団の死亡率×観察集団の人口) |
| 累積罹患率 | 観察期間中に新たに発生した患者数 | 観察開始時点の対象集団の人数 |
| 有病率(例:抗体保有率) | 疾病(抗体)保有者数 | 調査に参加した対象者数 |
| 相対危険(リスク比) | 曝露群の罹患率 | 非曝露群の罹患率 |
| オッズ比 | 症例群の曝露あり数 × 対照群の曝露なし数 | 症例群の曝露なし数 × 対照群の曝露あり数 |
| 寄与危険割合 | 曝露群の罹患率 − 非曝露群の罹患率 | 曝露群の罹患率 |
| 陽性反応的中度 | 真陽性 | 真陽性 + 偽陽性 |
| 相対頻度 | ある死因による死亡数 | 全死亡数 |
| 致命率(致死率) | ある疾病による死亡数 | その疾病の罹患者数 |
この表を自分で再現できるようになれば、数値が変わった類題にもそのまま対応できます。なお、死亡率・罹患率・致命率の3つは「死亡率 = 罹患率 × 致命率」という関係で結びついており、四分位数はデータを小さい順に4等分した境界値として求める点も、あわせて覚えておきましょう。
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